【退団インタビュー】 淺岡俊亮[PR] 3番のこだわり。

淺岡俊亮[PR]3番のこだわり。

 トヨタヴェルブリッツに6シーズン在籍したフロントローが、チームを離れる。

 淺岡俊亮。2019年度の加入以来、名前はほぼメンバーシートに載っていた。だが背負った番号は二桁が大半だった。昨季は全16試合中11試合に全て交代で出場。今季も18試合中15試合でメンバーに入ったが、先発は第8節の静岡BR戦のみ。後半、インパクトプレーヤーとしての出場が定着していた。

 退団を決意したのも、「先発で出たい」という思いからだ。

「戦術面の関係やキャラクターもあると思うし、3番のインパクトプレーヤーは少ないので、僕が後半から出るのは分かる。でも新人の時や2~3年目はスタートで出ても、いいインパクトを与えられていた。しっかり前半から出てインパクトを与えられる選手になったら、自分が求めている場所にいけるかなと。そのへんを考えたら、簡単ではなかったですけど、移籍を決断しました」

 首脳陣にも先発に出たい希望は伝えていた。だが返ってきたのは「スクラムが不安定」という答えだった。実際、3番には須藤元樹、木津悠輔、崔凌也らスクラムの猛者が並んでいる。本人もそれは承知だ。

「スクラムで比べたら安定するのはその3人。でもフィールドプレーには自信あるし、たとえ不安定なスクラムでも最初から出れば、徐々に安定してくる。それを練習からアピールできなかった僕の力不足でもあります」

 186㌢125㌔と、世界標準のサイズに恵まれた。京都成章高、帝京大では1番から3番までこなし、ヴェルブリッツ加入後はHOにも本格的に挑戦した。複数ポジションをこなせる強みはあるが、これからは3番一本に絞るつもりだ。

 大学時代は「人にやらされるのが嫌で」ウエイトはあまりやらないほうだった。だがヴェルブリッツ加入後、そうそうたる先輩たちが活躍するのを見て、「勝つためにはウエイトしかない」と決意。牧野慎二ヘッドS&Cコーチに「もう帰れ」と言われるまで、ウエイトルームに居続けた。食事もサラダチキンやタンパク質の多いヨーグルトなどに変え、体脂肪も絞った。今ではクラブハウスにある最重量のダンベルでも物足りないと感じるほどにパワーアップした。

「それでだいぶ変わりました。ここまでやりこまないとダメだと思えるかどうか」

 新しい挑戦の先には日本代表も視野にある。現在のキャップは1。まずはスコッド常連になることだ。

「ジャパンも去年の合宿に行ったとき“スタートの選手を中心に選考していく”と聞きました。今回も呼んでいただいたんですが、足の調子が万全でないので参加はやめました。完全にコンディションを整えて行きたい。来年以降、呼んでもらえたらと」

 チームを出ることに無論、葛藤はあった。

「会社の人も応援してくれたし、支えてもらっていた。それを考えると残りたかったし、このチームで優勝したかった。でもずっと心に引っかかっていたことがあって。それは何かと考えたら、自分の力を出す前に試合が終わってしまって、出し切れてないという思いでした」

 前後半でのフロントローの入替は今や常識だ。だがプレータイムを伸ばして自分を成長させたいと願う20代の若者にとって、後半のプレータイムではもの足りなかったということだ。

「スクラムは試合に出てこそ強くなる」

 須藤元樹も退団し、層が薄くなる右プロップ。淺岡は昨春加入した高校・大学の後輩でもある西野拓真に後を託す。西野のサイズは186㌢113㌔。先輩とほぼ重なる。

「身体はできてるんで、これからやっていけばどんどんよくなる。公式戦は強度が違う。出ると出ないのでは全然違うし、自分に足りないところも実感する。早く試合に出られるよう頑張ってほしい」

 在籍中、もっとも力を出せた試合は今季第11節のBL東京戦。淺岡は後半16分から出場、試合は22-33で敗れたが、終盤は相手陣ゴール前で攻める時間も長かった。

「僕が出た65試合の中で、一番いいプレーが出来た試合でした」

 忘れられない試合はトップリーグ2020の開幕戦、1月12日のヤマハ発動機ジュビロ(現静岡BR)戦だ。1年目で開幕の3番に抜擢された。「トイメンは山本幸輝さん(元日本代表・現神戸S)。めっちゃ強い相手とやらせてもらって、イエローももらいましたけど、プレッシャーも感じたし、いいプレーも出来て、メンタルも上がった。試合で使わないと伸びない」

 来シーズンは新天地でのプレーとなるが、そこでの競争も覚悟の上だ。

「どのチームも競争はあるので、そこに勝って、先発をとりたい。こんどトヨタと試合する時は、いい敵として強くなった僕と対戦してほしい」

 その時、淺岡が背負っている背番号はもちろん3番だ。

(文・森本優子)

「一番いいプレーが出来た」という第11節のBL東京戦

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