【退団インタビュー】秋山大地[LO] 「LOとして求められることの答えを出したい」

秋山大地[LO]

「LOとして求められることの答えを出したい」

淺岡俊亮と同期で2019年シーズンから加入したLO秋山大地も、今季限りでヴェルブリッツを去る。プレータイムが限られていたわけではない。リーグワンでも貴重な日本人セカンドローとして、昨季は先発8試合に出場。今季も開幕戦から7試合連続スタメン。終盤、ケガもあったが、計9試合に先発し、メンバー入りは13試合。しかし、十分なプレータイムと裏腹に、迷い続けたシーズンだったという。

「トヨタで6年間在籍して、たくさん試合に出していただいて、ラグビーでも人間的にも成長させてもらった。今シーズンは特になかなか勝てなかった悔しさもあるんですが、それとは別に自分のプレーを振り返ったとき、満足できた試合が全然なかった。そこのパフォーマンスを、ラグビー選手としてこだわりたかった。簡単な決断ではなかったけど、環境を変えてチャレンジしたいと」

 最初の数試合はまだよかったが、中盤から、自分の満足いくパフォーマンスが出来なくなっていたと振り返る。

「自分の強み、LOとして発揮しないといけないブレイクダウンの強さ、スキルで全然伸びていない。チームの求めるラグビースタイルが違うとかではなく、LOとして求められることの答えを出したかった」

 仲間には相談せず独りで結論を出した。それは三重Hでプレーしている兄・陽路さんも、聞いて驚いたほどだった。

「僕の性格上、人の意見を取り入れすぎる。離れたくないという気持ちもどこかにあるので、情が湧いて感情で判断してしまう。周りには申し訳なかったと思っています。

トヨタのことはめっちゃ好きです。携わってる人も、チームも。この環境を離れなくなかったし、勝って皆と喜びたい気持ちも強かったけど、それ以上にラグビー選手として自分が納得いくパフォーマンスを出さないと心から喜べない。今シーズンは勝てなかったですが、たとえ勝っていても同じことを考えていたと思います」

 それほどの重い決断だった。

 192㌢114㌔。2㍍超の外国人選手が多く活躍するリーグワンで、サイズを言い訳にせず黙々とチームに貢献する選手だった。

「外国人選手には高さではかなわない。僕の強みのフィジカルを出すと共に、運動量やスキルの部分でしっかり勝負しようと」

 この6年でプレースタイルも広がった。主将を務めた帝京大時代、ボールを持ったら「とりあえず全部突っこむタイプ」(本人)。実は、パスに自信がなかった裏返しでもあった。

「トヨタでパスの苦手意識がなくなりました。僕が入ったときのHCだったサイモン・クロンが、チーム全体にハンドリングの落とし込みがあって、そこからパスに対する苦手意識がなくなった」

 キックオフキャッチも上達した。こちらも全体練習後、キッカーと持ち上げてもらうプロップの助けを借りて練習に励んだ。「時には嫌な顔もされながら(笑)、“お願いお願い”と頼み込んでやってもらいました」

 スキル面に加えて、パトリック・トゥイプロトゥ(元NZ代表)やリッチー・グレイ(元スコットランド代表)ら、世界の頂点を極めたLOとプレー。多くを吸収した。

「彼らは、セットプレーにプライドを持っている。試合が土曜に終わると、月曜の朝8時にラインアウトのミーティングをするんですが、中一日のタイトなスケジュールでも、次の対戦相手を研究して“次はこういうサインでいこう”と。スキルももちろん、ラインアウトリーダーとしてのプライドを学びました」

 これまでの6シーズン、思い出深いのは、三重Hの兄・陽路さんと対戦した試合だ。5歳上の陽路さんがラグビーを始めた影響で、秋山もつるぎ高から楕円球を追いかけるように。高校、大学と入れ違いで別の道を歩んだ2人が、初めて対峙したのが、日本最高峰のリーグだった。

「兄がラグビーをやってなかったら、僕もやってない。日本のトップレベルで兄弟対決ができた。夢がかなったと思いました」

 公式戦での対決は2回。2021年3月6日のトップリーグ2021第3節と、昨年2月17日のリーグワン2024-25の第7節。

「今年も入替戦回避を賭けて対戦したかったんですけど」

 5月4日の第17節、陽路さんはメンバー入りせず、3回目の対決はお預けとなった。

 新たなチームではプロ選手としてスタートを切る。

「純粋に高校生の頃のように、自分の向上を求めてラグビーの原点的なところで楽しみたい。それがヴェルブリッツではだめなのかと言われると、自分が甘えてしまう弱さがあったので、環境を変えて退路を断とうと。今に後悔を残したくなかった」

 これまでも、これからも。大地にどっしり根を下ろすLOとして、信じた道を歩んでいく。(文・森本優子)

(写真説明)

三重Hに所属する兄・陽路さん(左)と兄弟対決(2024年2月17日)

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