吉田杏[NO8]
今年は「仲間思いの強さ」を鍛えてきた
在籍5年目。吉田杏にこの春から、新しい役割が加わった。姫野和樹、古川聖人共同キャプテンが不在の間、SH福田健太とチームのかじ取り役を任されたのだ。これは昨シーズン、古川が担っていた役割でもある。
「考えることが多くなったのが一番変わったところ。人のプレーまで考えるようになって、しんどかった時期もありますけど、プラスになったかなと」
12月初旬、帰国した代表組に、新加入のジョー・ローンチブリーも加わった練習の初日。全体練習後、ラインアウトを細かく合わせるLO陣の中央に、吉田の姿があった。
「リーダーグループでディフェンスを主に担当していて、去年から、ラインアウトも入れてもらったので。もうすぐ開幕なので、帰ってきた選手とディスカッションしながら確認してました」
リーダーとして輪の中で話す機会も増え、これまで以上に内容も考えるようになったという。
「一人ひとり、とらえ方も考え方も違う。個性豊かなチームなので、シンプルに伝わる言葉をチョイスするんですが、自分自身、あまり話すのが得意ではないので難しいなと」
そう言いつつも、理路整然とした言葉が出てくるのは、それだけ自分の中で吟味しているからだ。
ポジション登録はNO8も、LOからFLまでこなす。187㌢108㌔。コンタクト、タックル、ジャッカルと満遍なくこなせる貴重な存在。本人も、背番号にこだわりはない。
「ボールタッチの回数はポジションで変わってきますが、4番から8番まで基本的なキャリーやタックルは関係ない。そこはエンジョイしながらプレー出来れば問題ないかなと」
今季、HCに就任したベン・へリング氏がチームに提示したのは「ブラザーフッド」。きついことを仲間で助け合って乗り越えようというものだ。
「きつい練習を一人でやると、やらされているだけになる。そうではなくて、チームで立ち向かう。一人が倒れていても、仲間が手を取って一緒に立ち向かう。試合できつい時、どれだけ一人ひとりがもうワンプッシュできるか、今は“仲間思いの強さ”を鍛えていて、それがこれまでとは全く違う。練習の質が変わって、一人ひとりの出す雰囲気も変わりました」
リーダーとして仔細な変化を見逃さなかったからこそ、確かな成長を感じ取る。
名は「杏」。「きょう」と読む。
「家族はみな一文字の名前で、生まれる前から母親が決めていたらしいです(笑)」
杏は「口」の上に「木」と記す。
「口が土台で、その上に木。土台がしっかりしたうえに生えて、すくすく育っていく木のように、と」
漢字だけでなく、読み方にも親の願いがこめられている。
「キョウは“強”、強いという意味でもある。これまで二人、同じ呼び名の人に会いましたが、漢字は違った」
誰からも名前で呼んでもらえるところも、気に入っている。
名は体を表す。プレーでも言葉でも引っ張れる存在として、シーズンを迎える。
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