フランス代表に逆転負けも課題は明確。
SH茂野&WTB髙橋、地元で躍動。
日本代表は7月2日、「リポビタンDチャレンジカップ2022」で、豊田スタジアムでフランス代表と対戦、前半を13-13の同点で折り返したが、後半に突き放され23-42で敗れた。
豊田スタジアムでテストマッチが開催されるのは2019年のワールドカップ(W杯)日本代表対サモア戦以来。気温34度の猛暑の中、24570人の観客が詰めかけた。
フランス代表は世界ランク2位、国内選手権「トップ14」決勝に出場した主力選手は不参加も、来年の地元開催W杯の優勝候補だ。
トヨタヴェルブリッツからはSH茂野海人が先発、WTB髙橋汰地がリザーブ入り。コンディション不良で代表不参加だったNO8姫野和樹共同主将も、スタンドから試合を見守った。
試合は開始3分、フランス代表が先制トライ。日本代表は6分にSO李承信がPGを決めると、14分には自陣から2分近く攻撃を継続、NO8テビタ・タタフ(東京SG)が中央に飛び込み、10-7と逆転した。キックを使わず、個々の強いボールキャリーと、素早いパスでグラウンドの幅を使いゲイン。来年のW杯に向けて取り組んでいる新しい攻撃の一端を披露した。ディフェンスも、新しくジョン・ミッチェルコーチが就任。二人でタックルに入るダブルショルダーが機能。その後はPGを重ねる展開となり、13-13と同点で折り返した。
後半、先にギアを上げたのはフランスだった。4分、相手陣22㍍付近でラインアウトモールでプレッシャー、ジャパン防御のギャップをSOマテュー・ジャリベールがすかさず突き、フォローしていたWTBマティス・ルベルがトライ。18-13と拮抗を破った。この我慢比べが、その後の流れを決めた。
試合後の会見で坂手淳史主将は「ハーフタイムで“後半最初の10分、フランスが来る”と話をしたが、遂行力がよくなかった」
日本代表は防御の精度が徐々に低下。前半は止めていた状況でゲインを許し、反則も続いた。フランスは前半のスローモードから一転、ボールを動かし続け、3トライを追加した。
試合後の会見でFLシャルル・オリボン主将は「前半は苦しかったが、後半早い時間にトライをとれて楽になった」。ジェイミー・ジョセフHCのコメントは「後半すぐにトライをとられて0-7でスタートしたのが全て」。フランスが暑さの中で後半勝負を仕掛け、遂行した。
昨秋の欧州遠征ポルトガル戦以来の先発だった茂野は後半10分までプレー。チーム合流は1週間足らず。当初の先発SO山沢拓也(埼玉)のコンディション不良で、21歳の李承信(神戸)とのコンビが決まったのは前日と想定外もパスのタイミング、判断とも安定。前半のタタフのトライも、随所で潤滑油の役割を果たしていた。前日「地元だからと意識せず、ジャパンのプレーをやるだけ」と語っていた通り、これまで日本代表で積み重ねた経験値が発揮された。
WTB髙橋汰地は、茂野が下がったタイミングでピッチに登場。地元での初キャップ獲得に大きな拍手に包まれた。ビハインドでの投入だったが、しばしば思い切りよい走りを披露。33分、タッチライン際を抜け、オフロードパスを放った際には歓声が起きた。さらに試合終了のホーンが鳴った後、相手陣ゴール前のスクラムでは、真後ろにポジショニング。ボールが出るとポイントを作り、43分のWTBシオサイア・フィフィタのトライの起点となった。前日、「楽しみたい」と語っていた通り、デビュー戦でのびのびとプレーした。
会見でのジェイミー・ジョセフHCは温和で、コメントはポジティブだった。
「今週、選手がいなくなった逆境の中、新たに入ってきた選手が十分対応してくれた。来年に向けてのファーストステップとしては非常に良かった」
常々、「これまでの2年半で6試合しかテストマッチをしていない」と経験の少なさを憂えていた指揮官。世界ランク2位と13-13で競っていた時間帯を、これからどう伸ばしていくか。想定していた課題と収穫が得られたゆえの表情だった。
日本代表は来週、国立競技場でフランスと第2戦を戦う。
文/森本優子
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