【勇退選手インタビュー】SO ライオネル・クロニエ 愛された「クランチ」

SOライオネル・クロニエ
愛された「クランチ」

 
5シーズンにわたり、ヴェルブリッツの司令塔を務めたライオネル・クロニエが日本でのプレーを終え、母国南アに戻った。愛称はクランチ。2017年度に就任したジェイク・ホワイト監督の戦術のキーマンとして、同時期にチームに加わっていた。


「最初にトヨタに来た時、5年もプレーするとは思いませんでした。でも日本に来てまもなく、ここで腰を据えてプレーしていこうと決めました。日本を去るのは残念ですが、コロナの影響で以前ほど行き来が自由ではなくなってしまったことも帰国を決めた一因です」 

父の影響でラグビーを始めた。リーグワンのシーズン中にその父親を亡くした。チームから帰国を勧められたものの「それでは父が喜ばない」と日本に残りプレー。GR東葛戦で選手たちは喪章をつけて戦った。

「父はフリーステート州のバーキーズと言う小さなクラブで38歳までプレーを楽しんでいました。何かスポーツをやったら、と言われて選んだのがラグビー。4~5歳から始めて、プロ選手になりたかったけど、本当になれるとは思わなかった(笑)」

精密なキック力で堅実なスタイルを忠実に守りながらも、時折見せるフレアーなプレーが勝利に結びつくことも多かった。

「ラグビーは80分のゲームだけど、最後にチャンスが回ってくることが多い。僕がというより、たまたま10番のポジションだったからだと思うよ」


日本でのラストと決めていたリーグワン初年度。結果は残念だったが、楽しめたという。
「試合を重ねるごとによくなっていたから、序盤で試合が中止になったことが大きい。シーズン自体はエンジョイできたけど、チームとしては残念な結果だった」
司令塔としての才能はもちろん、自らの長所は「その場に溶け込めること」。ゆえに仲間からも愛された。


明治ラグビーのファンで、明治の試合はクラブハウスで応援していた。
「帝京大はサントリーやパナソニックっぽいけど、明治はトヨタとスタイルが似てる気がする。優勝できそうなのに、ちょっとの差で届かないところも親近感がある(笑)」

昨シーズン加わったピーター・ステフ・デュトイも来日直後「日本の生活について、クランチからいろいろなことを教えてもらっています」と名前を挙げていた。新しく入った仲間を繋ぐ役目も果たしていた。

5月に開かれたファン感謝祭も南アからインスタのストーリーでチェックしていた。
「ファンの皆さんに直接会えなくて残念でした。ヴェルブリッツはこの2~3年で、リーグワンのチャンピオンになれるチーム。これからも応援してください」


クロニエが来日した5年前より、日本でプレーする南アの選手は増えている。この傾向は今後も続くという。
「南アから日本は移動が大変だけど、それだけ日本のラグビーマーケットが成熟してきたんだと思う。それに日本でプレーした選手が国に戻って、素晴らしさを周りに伝えて、それも広がっていった。以前に比べると、ノンキャッププレーヤーも増えてきた。ワッツアップに日本でプレーした南ア選手のグループがあるんだけど、僕が来た頃はさみしいものだった。今は人数が比較にならないよ(笑)」


日本から帰国後はしばし休息、7月にシャークスの地元ダーバンに移り、新シーズンに備える。これからは世界最古の国内大会であるカリーカップと、ヨーロッパのチームと覇権を競うユナイテッド選手権(URC)に参戦する。
「7月の終わりにプレシーズンが始まるので、そこに合わせます。日本はプレシーズンが2~3か月と長いけれど、向こうはすぐにシーズンイン。両方のトーナメントに出ると、年間30試合くらいかな。ヨーロッパはあまりなじみがないので、新しい挑戦にワクワクしています」


クロニエがヴェルブリッツ以外でプレーした貴重な試合がある。2018年10月26日に開催された花園ラグビー場の改装記念試合。世界選抜の一員として日本代表と対戦した。世界選抜の10番をつけたクロニエは、変幻自在の動きを見せ、31-28で日本代表を下す原動力となった。
「確かにトヨタとは大きく違うスタイルでした。花園は南ア代表として、U20のジュニア・チャンピオンシップで戦った場所。特別な思い入れのあるラグビー場で、それも理由だったと思う」

クランチがシャークスで、どんなプレーを見せてくれるのか。これからも目が離せない。

 
 
 
LIONEL CRONJE/1989年5月25日生まれ・33歳/184㌢92㌔/クイーンズカレッジボーイズ高/在籍5シーズン

文/ 森本優子
 

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