第15節マッチレポート
信頼の逆転トライ。
4月27日、トヨタヴェルブリッツは横浜キヤノンイーグルス(横浜E)とパロマ瑞穂ラグビー場で対戦。逆転また逆転の試合は、後半45分にFB髙橋汰地のトライで35-31で逆転勝ち。劇的な幕切れとなった。
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絶体絶命からの歓喜。ホストゲーム最終戦となった横浜E戦、VOLTsと一体となり最後に勝利をもぎとった。
試合は横浜Eが先制。トヨタは後半、CTBシオサイア・フィフィタの連続トライで逆転したものの、その後、逆転され、28-31と3点を追う立場に。残り10分を切り、自陣ゴールを背にした苦しい戦いを強いられていた。
37分、自陣ゴール前でトヨタが反則。それまでスクラムで優位だった相手はスクラムを選択する。だがそのスクラムが崩れた。相手が膝をついた反則だった。
SOボーデン・バレットのタッチキックでHLまで戻す。そこでの攻防で相手が反則、NO8アマナキ・レレイマフィがシンビンとなる。再びバレットのタッチキックで、相手陣22㍍手前でラインアウトの機会を得た。
HO有田隆平がボールを投げ入れ、LOジョシュ・ディクソンがキャッチした時点で残り時間は30秒。そこから怒涛の攻撃が始まった。FWがボールを抱え、相手に身体を当てる。PR淺岡俊亮が突っ込んだときに試合終了のホーンが鳴る。その後LO山川一瑳、NO8デュトイ…。誰もがひたむきに前進。アーロンが素早く駆け寄り、精密機械の如く捌き続ける。
重ねたフェイズは31。83分15秒、のべ75人近くの手を経たボールをSOバレットが右足でインゴールに蹴り込んだ。速いスタートを切っていたFB髙橋汰地が難しいバウンドを胸に収めてインゴールに躍り込んだ。33-31。バレットが冷静にコンバージョンを決め35-31で試合終了。8769人のスタンドは大歓声に包まれた。
殊勲のFB髙橋汰地はその瞬間を振り返る。
「(最後の判断は)ずっとスペースが空いてたので、イチかバチかでボーデンに“蹴れ”と言いました」。バレットに伝えたのは「キック」を意味するチームのワードだった。
「ディック(ウィルソン)も言ってた。和田からもコールがあった。みんながそこを狙えてた」(髙橋)
BKは冷静にスペースを見極めていた。
「タイチがコールしたことで、自分も彼を信頼して、人生を賭けて蹴った。仮にボールが違う方向にはねたとしても、結果を受け入れる準備はありました」とバレット。
一連の攻防でアドバンテージは出ていなかった。キックが逸れるか相手がキャッチすれば、その時点で試合終了。数々の大舞台を経てきたバレットですら、「アドバンテージが出ていない中で蹴ったのは初めて」。
まさに乾坤一擲の勝負。それを生み出したのは全員の信頼感だった。
「そういった関係性をシーズン通して作り上げてきました。全員がハードワークした結果」(バレット)
BKだけではない。下地には31フェイズにわたる攻撃をミスなく繋ぎ続けたFWの献身があった。
「ラグビーは一つのボールを全員が繋いでトライを目指す」。言い古された言葉が改めて輝きを放つ。横浜Eも一人少ない中、反則せずに止め続けた。ラグビーの醍醐味が詰まった5分間だった。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチは、2節前の相模原DB戦に続き、ボーデン・バレットが選ばれた。
これで8勝7敗と一つ勝ち越したが、7勝ながら勝ち点で1上回っているS東京ベイが6位となり、トヨタは7位。
ホーム最終戦とあって、スタンドの熱気はこれまでになく高かった。後半からSHアーロン・スミスが出場してバレットとHB団を組むと、さらにボルテージは上がった。その中でつかんだ劇的勝利。これまで声援を送り続けてくれたファンが笑顔で家路につけた意義は大きい。
次節のBR東京戦がラストゲーム。今季初の秩父宮での試合は、ボーデン・バレットのファイナルでもある。
もう一人の殊勲者・髙橋汰地はこの日2トライを積み上げ13トライ。東京SGの尾﨑晟也と並び2位に上がり、15トライのマロ・ツイタマ(静岡BR)と2トライと差を縮めた。
「次はハットトリックで。モールの最後尾に入ろうかな(笑)」(髙橋)
この日の終盤につかんだ流れを途切れさせず、来季に繋げたい。
後半45分、逆転トライを決めたFB髙橋汰地
歓喜の瞬間。SOバレットはこの日、コンバージョンを全て決めた
後半19分から出場、一連の攻撃で何度も身体を張ったLO山川一瑳
「愛知県出身の選手として、この光景は本当に嬉しい」。地元での最終戦で挨拶する姫野和樹キャプテン
前節に続き2試合連続満員御礼だったパロマ瑞穂ラグビー場。まもなく改修工事に入る
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