BKが華やかにトライを奪い、FWが身体を張って白星を死守――。NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24、ブラックラムズ東京との開幕戦は、今季トヨタが秘める二つの顔を見せた試合となった。
ポカポカ陽気のパロマ瑞穂ラグビー場。前売り券は完売し、史上初となる満員の9059人の観客が詰めかけた。話題の中心は新加入のビッグネーム。ニュージーランド代表キャップ126のアーロン・スミスと同125のボーデン・バレットがHB団で先発。ワールドカップ決勝のPOMピーターステフ・デュトイが8番を着け、7番が姫野和樹キャプテンと、世界トップの顔ぶれが並んだ。
バレットのキックオフで始まった試合は、いきなりトヨタがエンジン全開でアタック。開始3分、花園から移籍したCTBシオサイア・フィフィタが力強いカウンター。HB団が繋ぎ、CTBチャーリー・ローレンスからパスを受けたWTBインゴールにヴィリアメ・ツイドラキがインゴールに飛び込み、今季のファーストトライを決めた。
トヨタはFWが接点で圧倒、NZ代表コンビのHB団がタイミングよくボールを配球。リズミカルにアタックが継続する。11分には相手ゴール前のラインアウトを起点に左へ展開。FB丸山凜太朗からパスを受けたWTB岡田優輝がトライ。12-0と、上々の滑り出しだった。
だが18分、アクシデントが。FB丸山が右ひざを痛め、担架で退場する。加入3年目の丸山は岡田のトライに繋がったラストパスをはじめ、裏へのキック、自ら抜くランニングと、開始から持てる才能を発揮していた。
SOバレットも、SOの位置に固定せず、様々に動いて攻撃をコントロールしていたが、それもCTBローレンス、FB丸山との連携が起点。その一角の退場は、その後のアタックに影響を及ぼした。
対戦相手のBL東京は、守って守って接点でプレッシャーをかけ、相手を追い詰めていくスタイル。アタックの勢いの鈍ったトヨタは接点で反則を重ねるようになり、徐々に流れは相手ペースに。
28分には1PGを返され、34分には、自陣ゴール前のラインアウトモールから元イングランド代表NO8ネイサン・ヒューズにトライを許す。コンバージョンは外れ、12-8での折り返しとなる。
後半は両チームともディフェンシブな展開に。お互いにゴール前でチャンスを作りながらも防御が固く、仕留めきれずに時計の針は進む。
それでも32分、トヨタが相手陣でフェイズを重ね、ペナルティを得ると、バレットに代わったSOティアーン・ファルコンがPGを決めて15-8に。
終了間際も、トヨタは自陣ゴールを背にした時間が続いた。37分、BL東京はペナルティからアタックを仕掛ける。止め続ける緑のジャージー。窮地を救ったのは、FLウィリアム・トゥポウの猛タックルだった。
「あれは、たまたま僕がその位置にいただけ。全員で止めたと思う」
その後もピンチは続いたが、スクラムでFWが意地を見せ、逃げ切った。後半の得点は両チーム通じてファルコンの1PGのみ。トヨタが前半に挙げた2トライを守り切った。
姫野和樹キャプテンは「いいスタートを切れたが、序盤の流れを止めたのは、ペナルティの多さ。レフリーにどうやって順応していくかが課題」と反省。それでも「タックルの成功率はいい数値、我慢強さは収穫。ポジティブにとらえて前に進んでいく」と、初戦白星を喜んだ。
トヨタで初先発のボーデン・バレットは「ケガ人は出たが、そのことで選手の持つ多彩な面も見られた。このチームはまだポテンシャルがある」。80分フル出場となったアーロン・スミスは「まだぎこちない部分はある。映像を確認して、トライを取り切るようにしたい。これからは成長していくだけ」と振り返った。
敗れたBL東京のピーター・ヒューワットHCは「今朝、試合に出ている選手の家族が他界した。そんな状況の中、ファイトしてくれた仲間を誇りに思う」
選手たちの左腕には黒いテープが巻かれ、腕のテーピングには「RIP. DADDY(お父さん、安らかに)」の文字も。BL東京にとっては、特別な意味を持った開幕戦だった。
序盤、胸のすくトライに湧いたスタンドは、後半は固唾をのんで肉弾戦を見守った。ロースコアの締まった80分、満員の観客はラグビーの醍醐味を堪能した。
1 「80分出て、周りの信頼を得られたと思う」(SHアーロン・スミス)
2 「システムを完全に把握するのには時間はかかる。自分に厳しすぎないようにやっていきたい」(SOボーデン・バレット)
3 プレーヤーオブザマッチに選ばれたFLウィリアム・トゥポウ
4 開幕戦で7人がヴェルブリッツデビュー。左からHO有田隆平、SHアーロン・スミス、
CTBシオサイア・フィフィタ、PR須藤元樹、FL小池隆成、LOトム・ロビンソン、SOボーデン・バレット
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