NZ留学レポート
田村魁世[SH]
「本場でレベルの高い試合を経験できた」
SH田村魁世は後ろ髪を引かれる思いでNZを後にした。5月末に南島インバーカーギルに留学。クラブチームでのプレーが認められ、国内選手権NPCでサウスランド(愛称スタッグス)のスコッド入りを果たした。ところが第2節から2試合出場したところで、ビザの種類が適応していないことが判明。書き換えを申請したが許可が下りず、小池と同日に帰国した。
当初は5週間の滞在予定だったが現地のパイレーツオールドボーイズでのプレーが現地の関係者に評価された。当初予定していた地元のSHが負傷したこともあり、帰国前日に残留依頼。予定を変更して、現地に残っていた。
「NPCに出られなくなった後も、ディベロップメントの試合は出ていたので、ラグビーが出来なかったことはなかったです」
サウスランドのSHは4人。2人がNPCにメンバー入りすると、残りは自動的にディベロップメントに振り分けられるため、練習も試合も通常通りこなしていた。
NPCデビューは8月13日、第2節のノースランド戦(△15-15)。8月19日の第3節は首位ウェリントンと対戦(●17-39)、いずれも交代出場で、テンポアップという田村の持ち味を活かしての起用だった。
「多少の緊張もあって、思うようなプレーはできなかったんですけど、レベルの高い試合を経験できたのは成長につながるのかなと。ウェリントンはスピードが全然違いました。一人ひとりのスキルも高かったし、組織としてしっかりしていた」
当初はPR淺岡俊亮、SO丸山凜太朗と3人での留学。2人が先に帰国し一人になった後は、チームメート5人でフラット暮らしだった。
「当初は寂しかったですが、周りが優しかったので」
サウスランドはCTB/SOマーティー・バンクス(元NTTドコモ)、トヨタにいたLOシュネル・シンらトップリーグ在籍経験のある選手が4人。アタックコーチを務めるジェームス・ウィルソンもトップリーグ時代の三菱重工相模原でプレーしていた。
片言の日本語を理解してくれるとはいえ、言葉の壁はあった。
「試合中は決められたワードがあるし、SOも分かりやすい単語で伝えてくれるので、ラグビー的には問題なかった。NPCが始まったら戦術ミーティングもあったのですが、その場での理解はまだ難しいので、あとでPDFでまとめられたものを見て理解する感じでした」
ラグビー大国ならではの体験もした。
「オールブラックスの試合が土曜日に決まったら、NPCの試合は日曜にずらす。オールブラックス基準でスケジュールが組まれていました。試合の翌日に聞くと、ほとんどの人が試合を観ている。全員が応援している感じです」
6月、たまたま入ったパブでオールブラックスXVと日本代表の試合を放映していた。
「みんなめちゃくちゃ(NZを)応援してました」
幕切れこそ心残りも、NPCに出場すると給与が派生することが出られなくなった理由。プレーヤーとして評価されたがゆえに生まれた障壁だった。
「いろんな運が重なってここまで来られました」
もとは先輩SH福田健太が留学する筈だったポジション。福田が日本代表入りしたことで指名され、急ぎパスポートを取ることからスタートした。一つずつ、目の前のチャンスをつかみ取った結果のNPCデビューだった。
今季のトヨタは、世界で一二を争う9番アーロン・スミス(NZ代表)が加入。茂野海人、福田健太と日本代表がふたり揃い、いつでもスタンバイできる状態でベテラン梁正秋が控える。SHは2023ワールドカップ代表が二人という超激戦区だ。昨季は肩の手術で出遅れた田村にとって、オフシーズンに本場で試合を重ねられたことは、最高の時間の使い方だった。
0コメント