NZ留学レポート
小池隆成[FL]
「ラグビーを楽しむということを思い出した」
6月からNZのオタゴに留学していた小池隆成の挑戦が終了した。留学当初はダニーデンのクラブチーム、グリーンアイランドでプレー。クラブのシーズン終了後は国内選手権NPCオタゴのディベロップメントチームに所属し、オタゴ代表入りを目指していた。先日、同チームの試合日程が終了。残念ながら昇格はならず、9月9日に帰国が決まった。ディベロップメントチームとして戦ったのは3試合。正式なリーグ戦やトーナメントではなく、相手のカテゴリーも様々だった。
「費用の問題か、近場での試合が多かった。“今日はここに行くよ”と言われてバスに乗って試合に行く感じ。
相手もよくわからなくて(笑)、最後の試合はトロフィーがあったので、おそらく定期戦ですが、もらえなかったので多分負け(笑)」
スコアボードのないグラウンドでの試合だった。小池は全試合に出場、通算成績は「たぶん」2勝1敗。「意外とNZの人って、勝っても負けてもテンションが変わらなくて、ビール飲んで“ウエィ~”という感じなので(笑)」
トヨタでは3列をこなすが、オタゴでは当初からLO一本だった。
「最初のグリーンアイランドでLOが不足しているということだったので、それからずっとLOでした。大学以来だったので、“こんな感じだったなあ”と思い出しながらやってました」
NPCには行けなかったが、試合では手ごたえを感じられた。
「環境に慣れるまでは大変だったんですけど、フィジカルやトヨタでコーチに教えてもらっているスキルは通用するものがありました」
チームには毎週、新しい選手が入ってきた。彼らに合わせて試合をする「NZ流」にも慣れた。心残りは、細かな意思疎通ができなかったこと。
「もっと“こういう形でボールをもらいたい”とか“こういうプレーが得意”とか、自分の言語で主張できたら良かったんですけど」
フィジカルやコンタクトで通用しただけに、ディテールを詰めれば、さらに力を出せたかも、という思いがある。それはこれからの課題だろう。
思わぬ発見もした。日本にいるときは試合前のルーティーンをきっちりこなすタイプ。「一つでもできないと不安になっていた」
それがディベロップメントチームでは「とりあえずバスに乗って、試合20分前にグラウンドについて、テーピングもなく試合が始まって」
いざ野に放り出されると、心配は無用だった。
「やってみたら“あれ、意外とできるな”って。これまでルーティーンを壊せない部分があったんですけど、こだわる部分と、こだわりすぎない部分。その間をいかないと、何かあったときに対応できないなと」
今後への大きな収穫だった。ラグビーに関しての視野も広がった。これまで東海大、トヨタと強豪チームに所属、周りは同じカテゴリーの選手だった。だがダニーデンでは、オタゴ大に留学している日本人選手から誘われて、週2回の草ラグビーの練習にも参加した。NZは現在、オールブラックスやNPC以外の選手はオフシーズン。年齢も性別も関係ない、ラグビー好きな仲間が平日の夜、仕事を終えてグラウンドに集まってくる。
「ハイランダーズの選手もいれば、女性や、おじさんもいる。ただラグビーをやりたい人が集まってくる。ちゃんとフィットネス練習があって、スキル練習があって、最後にタッチフット。練習が終わっても、ずっと(ラグビーを)やってる。こういうのって日本ではあまりない。
僕はこれまで“ラグビーを頑張ってる”という意識でいたけど、そこではみんな楽しんでいる。お金がもらえるわけでも、やらないといけないわけでもないのに、誰より身体を張る。ラグビーを楽しむということを思い出しました」
オタゴでの日々は、ラグビーの原点に気づく時間でもあった。その経験は、きっとこれからの人生に活きてくる。
「先週までは早く帰りたくて、“あと何日”とカウントダウンしてたんですけど、いざ帰るとなると名残惜しい部分があって(笑)」
すでにトヨタのチーム練習は始まっている。昨季のシーズン終了後、すぐに留学したためオフはなかったが、「帰ったら早く練習したい」と意欲的だ。
「2列3列どちらもやれるのは強みになると思うので、早く(リーグワン)デビューしたい。去年は試合に飢えていたので、NZで試合に出られたのは大きかった」
決意も新たに、日本でのシーズンをスタートさせる。
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