静岡BRマッチレポート。
スクラムで苦しみながらも白星つかむ。
トヨタヴェルブリッツは4月23日、磐田市のヤマハスタジアムで静岡ブルーレヴズ(静岡BR)とリーグワン最終節を戦い、スクラムで苦しみながらも37-27で勝利。通算成績を8勝8敗とし、6位で今シーズンの戦いを終えた。
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終盤の目標としていた3連勝で「ストロング・フィニッシュ」を果たしたものの、会見での姫野和樹共同キャプテンは浮かない表情。
「自分たちのやりたいラグビーが出来てない。内容的に見たら、静岡が優位に進めていた」
終始、相手の武器であるスクラムで苦しめられた。
「相手は、8人の力を百㌫ぶつけてきた。僕らはそれに対してばらけてしまった。一貫性がなかった」
それでも勝てたのは「自分たちの強みに立ち返って、巧みにコントロールできた」(姫野)から。納得いかない内容でも勝てたのは、チームに脈々と流れる「立ち返るプレー」があったからだ。
この日、ヤマハスタジアムは「2006年以来」(静岡BR・堀川隆延HC)という12203人の観客で、満員。大半が当日配布された静岡BRオリジナルのアロハシャツに身を包む。いわば「静岡BRの聖地」での戦いだった。
強い風下で迎えた前半。開始から吉田杏、アイザイア・マプスア、姫野和樹、フェツアニ・ラウタイミ…。バックファイブの強いボールキャリアーが迷わず相手にぶち当たる。スクラムでは押されたものの、エリアどりも上手くいき、ラインアウト、モールで優位に。14分、21分とラインアウトモールを起点にトライを奪い、14-0とリードする。
24分、NO8ラウタイミが危険なタックルで一時退場。一人少ない時間帯にラインアウトモールからトライを奪われた。31分にトライを追加して21-5とリードを広げるが、スクラムでの劣勢が次第に影を落とし始める。
トヨタが自陣で反則をすると、相手は迷わずスクラムを選択。38分にはゴール前スクラムからSO家村健太にトライを許し、21-12で前半を終了した。
後半、風上のトヨタだったが、静岡BRがスクラムを足掛かりに攻勢をかける。トヨタに反則が重なり、自陣ゴールを背負った展開が続く。
8分、その嫌な流れを断ち切る貴重なトライが生まれた。相手陣深くでペナルティを得るやいなや、SH福田健太が素早くボールを拾い上げて自ら抜け出す。キック。いったんキャッチした相手をつぶすと、福田をフォローしていたWTB髙橋汰地がトライを決めた。
「大学時代から一緒にやってるので、
僕が多分抜けるとわかって、ついてきてくれた」(福田)
これで28-15と差を広げるが、地元の声援を背にした静岡BRの勢いは止まない。すぐに2トライを返され、リードは4点に。トヨタはスクラムで反則を繰り返し、25分には左PR三浦昌悟が一時退場。スクラムに関して、姫野共同キャプテンにレフリーから注意が与えられた。
31分、自陣ゴールを背負っての相手ボールスクラム。絶体絶命の場面。
そこで、相手がスクラムを落としたとしてペナルティ。トヨタは危機を脱した。
「あそこでペナルティをしたのが全て」。敵将・堀川隆延も悔やむ勝敗の分かれ目だった。
その後は交代した選手たち(=フレッシュレッグス)が接点で健闘。
FBティアーン・ファルコンが自陣52㍍の長距離を含む3PGを慎重に決め、37-27で相手を振り切った。
ビジターゲーム独特の雰囲気の中、冷静にゲームをコントロールしたSO丸山凜太朗は言う。
「風下の前半をリードして折り返せたのが大きかった。常にSHやFBとコミュニケーションをとれていたので、焦りはなかったです」
スクラムでの劣勢も「試合前に想定していた」とSH福田。
「ウィリー(ルルー)から常に言われているんです。“考えること、そして考えすぎないことが大事だ“と」
試合前、様々な状況を想定していた選手たちの準備が、押されながらも試合をものにできた勝因だ。シーズンを通した選手の成長が表れた試合でもあった。
「来シーズンに向けて、すごくいい試合になった」
会見の冒頭、姫野共同キャプテンは言った。
「今日はシンプルなプレーを選択したけど、トヨタにはもっとクリエイティブなラグビーが出来る選手が揃ってる。そのためにはディテールが重要になってくる」
それはそのまま、来季への決意表明でもあった。
写真説明
①前半14、32分とトライを奪ったCTBロブ・トンプソン
②FBティアーン・ファルコンは終盤に3連続PGを決め、プレーヤーオブザマッチに選ばれた
③後半8分、ペナルティからSH福田健太が素早く仕掛ける
④最終戦で初先発。冷静なプレーを見せたSO丸山凜太朗
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