第15節・BR東京戦
雷神大暴れのゲームは、ラスト2分で劇的逆転。
リーグワン第15節は4月16日、秩父宮ラグビー場で行われ、トヨタヴェルブリッツはリコーブラックラムズ東京(BR東京)と対戦。キックオフ直前に雷雨の影響で開始が1時間延期に。後半も再び雷雨で30分中断されるアクシデントに見舞われた。試合は前半からトライの奪い合い。後半36分に29-34と逆転されたが、後半41分にSH福田健太が同点トライ。FBティアーン・ファルコンのコンバージョンが決まり、36-34で逆転勝ちを収めた。
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「クレイジー・ゲーム、クレイジー・ゲーム」。
記者会見でベン・へリングHCは語気を強め、言葉を繰り返した。
続けて試合を振り返った姫野和樹共同キャプテンも「(HCの)おっしゃる通り。キックオフに命を懸けてるのに、くじかれるとしんどい」。
アップからロッカーに戻り円陣を組み、いざグラウンドへ、という時に雷雨による1時間の延期を告げられた。雹まじりの激しい雷雨はほどなく去ったが、試合開始後も、後半16分から再び雷雨により30分の中断。ワールドラグビーは安全上の理由から雷に関する規定を設けている。これまで雷雨による延期や中断はあっても、1試合で二度は例がない。その間、スタッフは音楽をかけたり、室内練習場を使ったりと、一度上げた選手のコンディションを保つことに奔走。誰にとっても初めての状況下でのゲームとなった。
対戦相手のBR東京は第3節で対戦。ラインアウトモールに手こずり、25-29で敗れた相手。前半はトライの取り合いとなり、22-17でハーフタイム。後半、相手のエリアどりが優位になり苦しむも、16分、SOウィリー・ルルーが左へキックパス。WTBヴィリアメ・ツイドラキが今季5本目のトライを決めて、29-17。我慢して流れを戻してトライを追加、さらに畳みかけようとしたタイミングで、再び激しい雷雨となり、30分間の中断となる。再開された後、様相は一変した。
モールコラプシング、ノットロールアウエー、オーバーザトップ…。トヨタに立て続けに笛が吹かれた。
「試合の中断がスコアした後だったので、流れが切れた感じがした」(WTB髙橋汰地)
機を逃すまいとBR東京はタッチキックでトヨタゴール前へ。31分、37分とラインアウトを起点にトライを奪われ、29-34と逆転された。
この日はBR東京の今季最後のホストゲーム。「黒羊の祭典」と銘打ち、集客に注力。初めて1万人を超えた観客が、BR東京に声援を送った。「声援が力になるとは、こういうことか、と」。試合後、BR東京SH山本昌太ゲームキャプテンもそう振り返った、ホストゲーム独特の雰囲気だった。
シーズン序盤のトヨタであれば、29-34が最終スコアだったかもしれない。だが今のチームは土壇場で高い集中力を見せた。
残り時間2分を切ってのキックオフ。トヨタはプレーを切らずボールを繋ぐ。たまらず相手が故意のノックオンの反則。FBファルコンのタッチキックで確実に相手ゴール前に進め、ラインアウトモール。試合終了のホーンが鳴る。SH福田健太がボールを左へ捌く。CTBロブ・トンプソンが繋ぎ、姫野が前へ割って出る。すかさず福田が前週の相模原DB戦と同様、フェイントで目の前のスペースを攻略Mインゴールに飛び込んだ。試合終了のホーンはラインアウトモールの時点で鳴っていた。
「試合中から空いているスペースは見えていた」(福田)
ファルコンのコンバージョンも決まり、36-34で逆転勝ち。第3節で敗れた借りを返した。最後の2分間、ミスなく攻撃を継続した集中力が光った。
姫野共同キャプテンは試合再開後に反則が続いたことについて、「自分たちの集中力の問題」と言った。
「フォーカスする力はあるけど、途切れたら(そのまま)途切れてしまうチームでもある。そこは成長しなきゃいけない」
残るは1試合。開幕で対戦した静岡ブルーレヴズが最終戦の相手だ。静岡は首位を走る埼玉WKを44-25で破るなど、一気に調子を上げてきた。トヨタは現在6位で勝ち点33、静岡は7位で勝ち点30。場所はヤマハスタジアム。相手サポーターの熱い応援の中で、順位を決める大切な戦いとなる。
合言葉は「ストロング・フィニッシュ」。最後は3連勝で、成長の足跡を刻みたい。
(写真説明)
① HO彦坂圭克は 2トライを挙げ、11トライでトライランキング4位に
② LOマイケル・アラダイスはリーグワン初トライ
③PR三浦昌悟がボールを繋ぐ
④後半41分、SH福田健太が同点トライ
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