【マッチレポート】王者相手に甦った烈しさ。

第4節マッチレポート
王者相手に甦った烈しさ。

 トヨタヴェルブリッツはリーグワン第4節で1月15日、昨年度の覇者埼玉ワイルドナイツ(埼玉)と熊谷ラグビー場で対戦。19-34で敗れ、3敗目を喫した。
        
 ハーフタイムのスコアは14-27。
次に得点板の数字が動いたのは後半31分のこと。スコアの動かなかった30分こそ、この試合のハイライトだった。
 12チーム唯一の3連勝。独走態勢に入りそうな昨年度王者の埼玉を相手に、トヨタはボールキャリーに強いHO彦坂圭克、NO8フェツアニ・ラウタイミらを先発に据え、フィジカル勝負を挑んだ。それは奏功する。
 開始4分、SOティアーン・ファルコンが先制PGのチャンスを逃すが、7分、埼玉ゴール前ラインアウトモールからCTBロブ・トンプソンが縦へ。そこで出来たポイントからNO8姫野和樹主将が覆いかぶさるようにして、片手1本でボールをグラウンディング。7-0とする。
いい滑り出しだった。相模原DB、BR東京と後手に回ったブレイクダウン、ラインアウトモールも修正。相手の持ち味である防御からの切り替しも、一人目が冷静に読み切って止める。横に走りこんでくるランナーも同様に抑え込む。
 だが試合巧者の埼玉は、トヨタ陣に入ると一気に仕留める力を持っていた。13分、23分、26分と3連続トライ。7-21と差は開いた。だが、闘志は削がれなかった。
 豪州代表WTBマリカ・コロインベテが一気に走り切った3本目のトライ、SOファルコンが最後まであきらめず追い、寸前で足元を刈り、TMOでの確認となった。「この一戦」への執念が現れた場面だった。
 トヨタも34分、HO彦坂圭克がモールからトライを決め、14-24と差を詰める。
 後半の立ち上がり、ペースをつかんでいたのはトヨタ。埼玉に反則が続く。だがアタックを継続しても、サポートが一瞬でも遅れると、埼玉に絡まれる。拮抗した展開が続いた。
 25分、埼玉はゴール前でフェイズを重ね、最後はWTBコロインベテがインゴールにねじこんでトライ。
36分にトヨタもLO秋山大地がトライを返すが、19-34が最終スコアとなった。
 残り20分で一気にギアを上げ、トライを畳みかけるのが、埼玉のお家芸。だが後半のトライはお互い1本ずつ。ワントライで勝敗が入れ替わるスコアではなかったが、ピッチの緊張感が消えなかったのは、最後までトヨタのフィジカルが衰えなかったからだ。トヨタのウィリー・ルルーと埼玉の野口竜司。二人の国代表FBの精度高いキックの応酬も見ごたえ十分だった。
 終盤、場内のMCが何度もホームチームへの応援をうながしたが、反応は鈍かった。スタンド全体が試合に引き込まれていたからだ。ベン・へリングHCは、その時間帯を「チームのハートとソウルが見えた」と評した。
 だが、相手のディフェンスを破りきれなかたのも事実。
 試合後の会見で埼玉・坂手淳史主将は「すごくフィジカリティの高い試合。明日は身体が痛い」と笑いつつ、防御を勝因に挙げた。
「ディフェンスはチームのプライドが見えるところ。そこは大切に鍛えてきた」
 前半で退場した姫野共同キャプテンに代わって会見に出席SH福田健太は言った。
「いい我慢比べだった。うちのほうが少し我慢が足りなかった。直すのは本当に細かいところ」
 トライ差は1本。トヨタのプライドを出せた部分でもある。昨年度の王者が、眠っていたトヨタの烈しさを呼び起こした。
 この試合でツイドラキ兄弟が公式戦で初めて同時にピッチに立った。弟・ヴィリアミは11番で先発、兄・バティリアイは後半8分にロブ・トンプソンの交代でピッチヘ。
「ラグビーを始めた頃からの夢が今日、かないました」
 試合後、弟は喜びをにじませた。試合中はコミュニケーションをとりやすいよう、フィジー語で会話を交わしていたという。
「二人がメンバーに入ったことをフィジーの家族に連絡したら、すごく喜んでくれました」
 夢は、家族を日本に呼んで二人が出る試合を観戦してもらうこと。そこにも、一歩近づけた。


①「バハ、20回くらい(突破)いったでしょ」。会見で埼玉・坂手主将も名前を挙げたNO8フェツアニ ラウタイミ
②前半6分、トライを挙げたNO8姫野和樹共同主将

③PR三浦昌悟がWTBマリカ・コロインベテを止める

④初出場のSH梁正秋も激しいタックルを見せた
⑤前週のミライマッチで活躍、今季初先発したCTBチャーリー・ローレンス

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