愛称・隊長に「元」がついた。
明るいキャラクターで、ウエイトルームでノリのいい音楽を流し、周りを盛り上げたPR高橋洋丞が、トヨタで8年間の現役を終えた。
もっとも本人によれば、その評価はややニュアンスが異なる。
「僕がウエイトに早めに行っていたので、音楽を流していたというのもあります。単純に空いているときにやりたかったから。自分が終わったら他の人に(音楽を)任せてロッカールームに戻っていました」
シャイなのだ。高橋は埼玉生まれの埼玉育ち。正智深谷高から大東大に進学、2013年にはキャプテンを務め、関東大学リーグ戦3位。梶伊織、長谷川崚太、小山大輝(ともに埼玉ワイルドナイツ)…。チームメートは今もリーグワンで活躍している。
就職先にトヨタを選んだのは、フィジカルなラグビ
ーに惹かれたから。
「入ってみたら、僕が思っていた通りのチームでした。自分はがむしゃらにぶつかりたいタイプ。人より多くタックルに行けるよう頑張ってました。あと、スキルはそんなにうまくないので、ちょっとでも貢献できたらな、と思ってました」
2014年度に入社。
2015年度シーズンは先発1、リザーブ9試合に出場、悪くない滑り出しだった。翌年の出場はリザーブ10試合。「インパクトを求められていたので、そんなに先発にはこだわらなかった。出させてもらったら、そこでやることをやるという感じ」
それでも近年は後輩たちに出番を譲るように。リーグワン初年度で現役生活を終えた。
「試合に出る出ないはスタッフが決めること。選んでもらうのはおまかせ。楽しくラグビーができました。30歳を超えてまでラグビーができるとは思わなかった」
第1列の例に漏れず、スクラムをこよなく愛した。
「フロントローでしか味わえない仲間意識があった。試合でフロントローは3人しかいない。それをみんなで作り上げていく楽しさ。いい経験になりました」
中でも薫陶を受けたのは、同時に引退した吉田康平だ。
「康平さんは憧れ。選手としていちばん尊敬していました。スクラムも大学のときはあまり強くなかったんですが、社会人で鍛えてもらった強くなった。成長できたかなと思います。コーチとしてはウエイトを教えてくれた佐名木さん(宗貴・元S&Cコーチ)」
高校の頃は100㌔弱。ウエイトに打ち込み、トヨタでは116㌔まで増やした。
↑ 最前列右から3人目
「これから半年かけて少しずつ落として、普通の人の体形に戻します(笑)」
イヤーブックのアンケートの「もう一度ラグビーをするとしたら、やりたいポジション」はPR。
「他のポジションもやりたくないわけじゃないですけど、フロントローがいちばん“濃い”」
もっとプレータイムを伸ばしたかったという悔いはある。だが、それ以上に憧れたトヨタのプロップにこだわった。
「僕が入ったときのトヨタのスタイルが好きだった。新たなものを要求されたこともありますけど、それだったら終わったときに後悔するかなと。何年やってもスタイルは変えず、自分の好きなようにやった。やりきれたかなと」
最後まで自らのスタイルを貫いて現役を終えられるのは幸せだ。ちょっと不器用で、でもどこまでもまっすぐで。高橋は最後までトヨタの押しを貫いた。
たかはし・ようすけ/1991年8月6日生まれ・30歳/180㌢116㌔/正智深谷→大東大/在籍8シーズン
文/森本優子
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