この春、5人のルーキーを迎えたヴェルブリッツ。いずれもユース世代の代表歴を持ち、関東と関西の大学ラグビーを沸かせた将来性豊かな選手ばかり。その横顔を紹介していこう。
FBヴィリアメ・ツイドラキ[摂南大]
〜父を追い、兄を追って〜
トヨタラグビーのDNAを受け継いだランナーが新たに加わった。摂南大から加入したFBヴィリアミ・ツイドラキだ。2歳上の兄CTBバティリアイさんは在籍5年目、今季、リーグワン中盤からレギュラー争いに絡んできた。
父・パットさんは‘90年代、トヨタのラグビー部で活躍したWTB。日本代表でもキャップ19を獲得、ワールドカップにも出場している。引退し、母国フィジーに帰国した’02年、33歳の若さで急逝した。その兄弟が揃って父が駆けたグラウンドに立つ。兄と同じチームになったのは初めてのことだ。
「お兄ちゃんが豊田ラグビースクールにいたときは、僕はまだ小さかったし、高校はNZに行って、僕はずっとフィジーにいたから」
兄は大学時代からよく連絡をよこし、食事に誘ってくれた。今もグラウンドでわからないことがあると、すぐ兄にたずねる。
「周りから、“そこまで仲がいい兄弟はあまりいない”と言われます」とはにかむ。
摂南大に入学するため来日したときから、卒業後はトヨタでプレーするのが夢だった。だが大学2~3年時は自信を失っていた。トップリーグ(当時)のレベルについていけるかどうか不安だったのだ。だから、「いまチームの一員になっていることが夢のようだ」と目を輝かせる。
スピード、コンタクトとも大学時代から頭一つ抜けた存在、1年生から関西大学リーグで活躍。大学4年時の昨季は副将を務めた。
「1年生のころから日本語はわかってたけど、自信はなかった。でもバイスになって自分から周りに意見を言えるようになった。留学生の通訳もしていました」
プレーに加えて、グラウンドで日本語、英語を流ちょうに話せるのも大きな武器だ。
チーム内の愛称は「タイ」。ミドルネームの「ヒライ(平井)」が由来だ。平井俊洋氏はラグビー部OB。父・パットさんの日本滞在時、家族同様に面倒を見た。弟は父から、恩人の名をミドルネームにもらった。その交流は今も続いている。
「フィジー語で“タイ”はおじいさんという意味。僕は平井さんのことをそう呼んでます」
今もトヨタの関係者から、亡き父の偉大さを耳にする。
「お父さんのプレーはビデオで見ました。僕やお兄ちゃんより絶対速い(笑)」
強みはコンタクト。昨季はFB固定だったが、CTBもWTBもこなせる。もっとも得意とするのは兄バティリアイさんと同じ13番。なんでも教えてくれる兄は、手ごわいライバルでもある。大学時代は生来の強さで単独で突破できたが、リーグワンは勝手が違う。
「大学時代は一人でいけたけど、自分の強みを失わずに、チームのストラクチャーの中でプレーできるようにしたい」
早く父と同じグリーンのジャージーをまとって、兄とグラウンドを駆けたい。
VILIAME TUIDRAKI/FB/184cm100kg/1997年1月7日生まれ/ナマカパブリックスクール/U20フィジー代表、ジュニア・ジャパン
文/森本優子
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