第17節マッチレポート 待望の白星挙げ入替戦回避

トヨタヴェルブリッツは5月4日、NTTジャパンラグビー リーグワン第17節で三重ホンダヒート(三重H)と鈴鹿で対戦。入替戦回避をかけた試合で前半を31-11と大きくリード、後半の三重Hの猛攻をしのいで38-30で勝利。入替戦出場回避とディビジョン1残留を決めた。

 5月の陽光が降り注ぐスタジアム。ヴェルブリッツにも緑が芽吹いた。前半40分の戦いぶりは、誰もが待ちわびていたものだった。

 キックオフからブレイクダウンでFW一人ひとりが激しく前に出て、相手を圧倒。アタックではSO小村真也のキックでシンプルにエリアを取って、前8人の勢いを引き出した。6分、CTBニコラス・マクカランのゲインで相手陣に入り、FLウィリアム・トゥポウが先制トライ。12分にはラインアウトモールから今季おなじみのSO小村-WTBジョセフ・マヌのホットラインで2トライ目。16分にはラインアウトモールからHO彦坂圭克、32分にはLOジョシュ・ディクソンと4連続トライ、26-6と一気に畳みかけた。41分、前半終了のホーンが鳴った後も、敵陣10㍍のラインアウトモールからHO彦坂が抜け出し独走トライ。31-11での折り返しとなった。

 後半になると三重Hが勢いを取り戻す。「気が緩んだわけではない。強い風の風下で、そこで少しキック処理に後手を踏んだ」(NO8姫野和樹キャプテン)。スタジアム上空を吹く強風は目まぐるしく向きを変え、キック処理を難しくさせた。

 さらに三重Hは前半34分から、第13節以降ケガで戦列を離れていた闘将パブロ・マテーラを投入、モメンタムを取り戻していた。ヴェルブリッツ側に反則が続き、10分、22分とトライを奪われ、スコアは31-23と8点差に。27分にも3トライ目の判定があったが、TMOでトライキャンセルとなる。

 再開直後、流れを決定づけるトライが生まれる。自陣中盤でのヴェルブリッツボールのスクラムからBKへ。FB髙橋汰地が大きく抜け出すと相手を引きつけ、ぎりぎりのタイミングでWTBバティリアイ・ツイドラキへパス。そのままライン際を駆け抜けた。

「まず自分のスピードでWTBを振り切って、相手のFBが僕かタイ(ヴィリアメ・ツイドラキ)に行くかで最後のチョイスをしようと」(髙橋)。冷静な判断だった。小村のコンバージョンも決まり38-23。最後に相手にトライを許したが、38-30で逃げきった。

 姫野キャプテンは開口一番「まずは率直にほっとしてます」。前半でスティール2回、試合通じて両チーム最多の17タックルを決めるなど、リーダーとしての重責を十二分に果たした。

「結果にはとても満足。実行力もありディフェンスも出来ていた」(スティーブ・ハンセンHC/D.O.R)

 POMは2トライを決めたHO彦坂圭克。これまで4勝のうち、3試合にPOMに選ばれている。彦坂は「僕はさぼってたんですが、他のFWが頑張ってくれたので」。いつもと変わらず仲間を称えた。

「入替戦に回る危機感というより、グランドファイナルとして試合を楽しもうと。そういう雰囲気をみんなが作ってくれた」(彦坂)

 勝ち星に恵まれず苦しんだシーズン。土壇場で開き直ったことで、本来の姿を取り戻した。

 最終スコアは8点差。7点差以内で相手に勝ち点を与えていれば、入替戦の出場は最終節までもつれた。FWの献身をスコアボードに繋げたのは、6トライのうち4本のコンバージョンを決めたSO小村だ。

「若手でありながら小村が見せたキックの精度が7点差以上の勝利につながり、来週以降のチームのありかたを決めた」とハンセン氏。1点の重みを痛感した試合でもあった。

 三重Hのキアラン・クローリーHCは「火曜にメンバーを発表後、翌日にケガでメンバー交代があり、さらに試合前にSOマヌ・ヴニポラがふくらはぎを痛め出場できなくなった。アクシデント続きだったが、選手を誇りに思う」と語った。

 入替戦回避となったヴェルブリッツだが、この一戦に至るまで、伏線はあった。前節の東京SG戦終盤、14人になった状況で交代選手を入れずに戦い抜いた。前日にはミライマッチ最終戦で、34-19で三重Hを下した。キャプテンを務めたSO北村将大は、「みんなリーグワンに出たいという悔しい思いを持ってここにいる。その中で、自分の役割を全うできるかどうか」と語った。

 メンバーの様々な思いが一つになっての勝利だった。

 これで5月10日、豊田スタジアムにクボタスピアーズ船橋・東京ベイを迎えての一戦が、今季最終戦となる。

「1年の集大成、トヨタらしく勝って気持ちよく終わりたい」(FB髙橋)

 第17節時点で順位は10位。誰もが望んでいた位置ではないが、前半に取り戻した本来の姿を来季に繋ぐ形で締めくくりたい。

        (文・森本優子)

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