トヨタヴェルブリッツは3月30日、NTTジャパンラグビー リーグワン第13節で横浜キヤノンイーグルス(横浜E)と大分・クラサスドーム大分で対戦。開始4分、FL青木恵斗のリーグワン初トライで先制すると、その後は相手の攻めを固い防御でしのぎきり、終盤にトライを追加。29-17で下し、連敗を2でストップ。通算成績を3勝1分け9敗とした。
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大分市内の桜は満開となったが、この日の最高気温は9度。厳しい寒の戻りの中、熱に満ちたグラウンドで嬉しいシーズン3勝目を挙げた。
アーリーエントリーの小村真也が10番で初先発。これまで課題とされてきた立ち上がりに先制する。小村のショートキックをWTBジョセフ・マヌが繋ぎ相手ゴール前へ。そこでフェイズを重ねると、小村は横に走り込んできたFL青木恵斗にパス。青木はそのまま力強く相手を跳ね飛ばし、トライラインに飛び込んだ。小村は「試合前から(青木と)そのスペースを狙おうと言っていたので、うまく決まった」。青木も「これまで3試合出させてもらって、だんだん視野が広がってきた。空いてるスペースが見えたので、真也に叫んでボールをもらった」。大学同期の息の合った先制トライは、チームの推進力となった。その後は、相手の継続したアタックを受け、防御に徹した時間帯となる。何度も相手にフェイズを重ねられながらも、横の連携が綻びることはなかった。初トライを許したのは前半33分。5-7とコンバージョン差での折り返しとなった。前半のスタッツはテリトリーはヴェルブリッツ29、相手が71。タックル数はヴェルブリッツ111に相手が63。トライの後はひたすら守り続けた前半だった。
後半開始早々、またも小村がひらめきを見せる。2分、WTBジョセフ・マヌにキックパス。マヌは悠々とキャッチしてゴールラインへ。第11節のBL東京戦と同じトライだった。これで逆転して12-7。前後半とも先にトライをとったことで心理的にも落ち着いた。
防戦一方だった前半から徐々に流れを戻し、12分にCTBニコラス・マクカラン、26分にHO彦坂圭克ゲームキャプテンがモールから十八番のトライ。24-10まで差を開いたが、相手は昨季トップ4。28分には、自陣ゴール前で青木が故意に相手のボールをはたいたとしてイエローカード。ペナルティトライも宣告され、24-17と点差を詰められるが35分に彦坂が2トライ目を奪い、29-17で逃げ切った。
2試合ぶり復帰のゲームキャプテン彦坂は「チームとして前に出てアグレッシブにディフェンスできた」と防御を勝因を挙げた。自身も2トライを挙げPOMにも選ばれたが、「あれは僕じゃなくFWのトライ。他の7人が押してくれないとスペースはできないので」と仲間を称えた。
スティーブ・ハンセンHC/D.O.Rは「今週はフラストレーションにどう対処するかメンタルゲームを中心にやった。リーダーも周りの選手もよくやってくれた」
立ち上がりの悪さ、防御と前節までの課題をきっちりと修正できた上での白星だった。
「攻守両面で実行力がついてきたことで勝てた」とハンセン氏。「これが出来れば勝てる、というイメージがわいた試合」と位置づけた。
開幕以来の先発で故郷・大分での初試合となったPR木津悠輔は「ケガが治ってから、スタッフやコーチからアドバイスを受けて自分を見つめ直す時間を作った。前の自分よりは少し上かな」。スタンドで両親や姉、親戚が見守る中で雄姿を見せた。
チームに新鮮な風を吹き込んだ青木と小村。共に若さもあったが、周りの選手がミスをミスとさせないカバーを見せた。ゲームコントロール、パス、エリアを稼ぐキックと十分すぎる活躍を見せた小村だったが、唯一不調だったのはプレースキック。「大学でケガをしてからしっかり練習ができていないので練習不足。これから練習します」。青木は「勝つことがラグビーしてて一番幸せ」と目尻を下げた。2人が生み出したこの勢いを、さらに力強いものに変えていきたい。
この試合のもう一つの注目だった7番対決。ヴェルブリッツの7番はマイケル・フーバー、相手はヴェルブリッツ在籍時に、フーパーから教えを請うた古川聖人。ゲームキャプテンも務めた古川は「今日はフーパーにスチールされてない。彼が入ってきそうなところには、思い切り先に入った」。成長した姿を師匠に見せた。
これで交流戦は終了、残り5試合は再度カンファレンス内での対戦となる。目の前の一つひとつの試合と、しっかりと向き合っていく。
(森本優子)
写真説明
後半35分、この日2個目のトライを決めたHO彦坂圭克
故郷・大分で先発出場したPR木津悠輔。「彼の持っている強いマインドセットが反映された」とハンセン氏
マプスアの交代で前半から出場、持ち前のしぶといディフェンスを最後まで見せたFL小池隆成
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