【コラム】新ジャージ 製作マル秘物語

2024-25シーズン、3季ぶりにファーストジャージとセカンドジャージのデザインが一新された。今回はトヨタヴェルブリッツ史上初めて、トヨタ自動車ビジョンデザイン部がデザインを担当した。誕生に至るまで、深い物語が秘められていた。


 同部署は、実際の製品を開発する前のデザイン企画やビジョンの策定を担当。通常は自動車の内外装やメーターグラフィックのデザインを主に手掛け、アパレルであるラグビージャージのデザインは初めて。

 チームからデザイン依頼があったのは4月末。色やイメージなど要望を聞き、GW明けに部署内でコンペを実施。数十人のデザイナーから応募があった。全てのデザインを選手にも見てもらい、ファーストジャージは金田恵梨子さん(UXデザイン室)、セカンドジャージは大場豪(つよし)さん(インテリアデザイン室・内装部品デザインG・グループ長)のデザインが採用された。

【左:ファーストジャージをデザインした金田恵梨子さん、右:セカンドジャージをデザインした大場豪さん】


ファーストの色はチームカラーでもあるグリーン。コンセプトは「RAIJIN」。

「ヴェルブリッツは稲妻、雷神とモチーフがはっきりしているチーム。そのユニークさをとり入れたら、個性的になっていいなと」(金田さん)

 左右の胸には、雷神が背負っている太鼓をイメージしたグラフィックを配置。力強い印象にするために肩回りは黒色に。下部の和柄文様は雷神が地上で闘うためにモチーフの柄に化身し、天から降りて宿った様子をイメージしている。

「文様は私の案ではなくて、他のメンバーから“和柄を入れたほうが印象的になる”というアドバイスがありました」(金田さん)

 創造力あふれるデザイナーは様々な方法でデザインを考案した。

「手書きのスケッチを出したメンバーもいれば生成AIで作ったり、3D CGにして実際にスクラムを組ませてみたり、リアルなフィギュアを作る仲間も。それぞれ、自分の強みを生かす形でアイデアを出しました」(金田さん)


 セカンドジャージはコーポレートカラーの赤がメイン。セカンドを着用するのはビジターゲームとあって、相手のファーストジャージーに負けない力強さを表現する必要があった。コンセプトはTOYOTA MOTOR SPORTS IMAGE。レースの現場で、鍛え上げられて改良されていくプロトタイプ(=開発途中の車両)に着想を得た。 

「チームが秘める力、“無限のポテンシャル”を表現できたらと。カムフラージュパターンを使って、“レースのゴール=トライ”を想起させるチェッカーパターンと融合させました」(大場さん)

 通常は自動車の内装デザインを手掛ける大場さん。初めてのジャージにあれこれと知恵を絞った。

「ラグビー選手は、普通の人よりも身体ががっちりしている。腕を組んだ時どう見えるかなど、いろいろな視点が必要でした」

 デザイン画を見た選手からも様々な案が出た。

今回、セカンドジャージのパンツにはジャージと同様の柄が入るが、これは選手からの提案を基にしたもの。柄がプリントされたパンツは前例がない。

「作っていただいたカンタベリーさんには“これは選手からのたってのお願いです”と依頼しました」と大場さん。

 2人の発想に、大きなインスピレーションを与えたのは、同部署が公募の際に実施した「クラブハウス見学ツアー」。参加したデザイナーは、初めて目にする筋トレの様子や、クラブハウスの風景に刺激を受けた。

「クラブハウスに歴代のジャージが綺麗に飾ってあって、そこからいろんなインスピレーションをもらいました」(大場さん)

「クラブハウスの中には、チームのロゴマークやテーマカラーの緑色が至る所に散りばめられていて、チームの皆さんがヴェルブリッツらしさを大切にしていることが伝わってきました」(金田さん)

 ファーストジャージ下部の和柄文様は、実は2代前のカンパニージャージに入っていたもの。

選手たちが練習に汗を流す「今」と、壁に飾られている過去のジャージ。クラブハウスには、ヴェルブリッツの伝統が色濃く息づく。

 その風景を実際に目にしたことで、歴代ジャージに込められた思いを受け継ぐこともできた。2人のデザインに、さらに仲間がそれぞれの強みを出し合って完成した新ジャージ。作成の過程はまさに、ラグビーの精神そのものだった。

 開幕後は、部署でツアーを組んで試合を見に行くプランが持ち上がっている。セカンド担当の大場さんは「私は遠征に行かないと」と笑う。

 会社の仲間の思いが詰まったジャージに身を包み、トップでゴールを駆け抜けたい。

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