第13節マッチレポート
バレット、長崎で輝く。
トヨタヴェルブリッツは4月13日、長崎市のかきどまり陸上競技場で三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)と対戦。34-20で勝利し、通算成績は7勝6敗に。前節の花園L戦に続き今季初の連勝で、順位を6位とした。
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前半は8-3の僅差リード、後半立ち上がりに逆転され、追う立場に。反則が続き、流れが停滞する魔の時間帯を吹き飛ばしたのは、SOボーデン・バレット。ワールドラグビーの世界最優秀選手を二度受賞した実力者が、実力を遺憾なく発揮した。
先制したのはトヨタ。開始6分、相手陣内のスクラムで得た反則から、4試合ぶり復帰のNO8ピーターステフ・デュトイが仕掛け、WTB和田悠一郎がリーグ初トライ。5-0としたが、その後は中盤で戦う展開となり、試合は拮抗した。
5点リードで迎えた後半、最初にスコアボードを動かしたのは相模原DBだった。8分に連続攻撃からトライ。3分後には、ラインアウトでトヨタがスチールしたボールがはね、それをキャッチされてトライ。8-17とリードを広げられる。
相手に持っていかれそうな流れを引き戻したのは背番号10だった。
15分、相手ゴール前ラインアウトモールからCTBシオサイア・フィフィタが縦をついてディフェンスを集めると、SOバレットが空いたスペースを攻略。トヨタ加入後、初のトライをスコアした。
直後の17分にもHL付近のラインアウトから展開、WTB和田悠一郎がこの日2本目のトライで20-17にするが、21分にPGを許し、20-20の振り出しへ。
その後のバレットのキックが出色だった。23分、自陣から蹴ったボールは、相手ゴールライン前でタッチへ。狙いすました50/22のキックに、スタンドからも感嘆の声があがった。
そこからのマイボールラインアウトを起点に、バレット自身が2本目のトライ。27-20で再逆転した。27分には中央付近のスクラムから仕掛け、バレットが抜けた後に蹴ったボールをFB髙橋汰地が拾い上げトライ。34-20と差を広げ、そのまま逃げ切り。ボーナスポイントも獲得しての勝利となった。
FL姫野和樹キャプテンは「自分たちがボーディーに頼り過ぎず、それぞれの仕事を百㌫理解してやったからこそ、彼が活きた」と振り返った。周りの選手がしっかり役割を果たしたことが、世界最高峰の司令塔が輝く下地となった。
「海と山に囲まれ、坂も多い長崎はウェリントンに似ている」とバレット。生まれたのはウェリントン近郊のニュープリマス。2019年にブルーズに移籍する前は、ウェリントンを本拠とするハリケーンズで長年プレーし、そこでトップ選手へと成長していった。故郷を思い起こさせる風景も、背中を押したのだろう。
長崎で初開催されたリーグワンの試合。三菱重工業の創設の地であることから、相模原DBのホストゲームとして開催された。初夏を思わせる日差しの下、6311人の観客がスタンドを埋めた。
観客席には近隣のラグビースクールに通う子供も多くつめかけ、試合が終わってからも「バレット!」の声援を止めず、名前入りのタオルを掲げ続けた。通常の試合ではあまり見られない光景だった。
「子供たちからの声援が力になった。まるで何千人もいるように感じました」とバレット。この日、憧れの選手のプレーを目に焼き付けた子供たちがいつか、自分の足で同じ舞台に立つはずだ。
チームは2日前に現地入り。前日練習後、選手たちは思い思いに観光を楽しんだ。普段訪れることのない地での試合は、リフレッシュする機会ともなった。
次節は全勝で1位を走る埼玉パナソニックワイルドナイツを、パロマ瑞穂ラグビー場に迎え撃つ。
この試合からNO8デュトイも復帰。「彼が戻ってきて、ラインアウトでリーダーシップを発揮してくれて助かっている」と姫野キャプテン。停滞した時間帯を押し戻す粘り強さも戻り、主力もパフォーマンスを上げてきた。リーグ終盤、ここまでベストのシナリオは描けた。残り3試合、無心で戦う。
トヨタでの初トライも含む活躍でプレーヤーオブザマッチに輝いたSOボーデン・バレット
WTB和田悠一郎も初トライ。「やっとで取れました」と笑顔
4試合ぶりに復帰したNO8ピーターステフ・デュトイ
山の上に位置し、広々としたかきどまり市営陸上競技場
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