第8節神戸S戦マッチレポート
「これを許しちゃいけない」。
キャプテンの檄は響いたか。
心をえぐられる敗戦だった。3月3日、トヨタヴェルブリッツは東大阪市花園ラグビー場でコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)と対戦、前半を12-15の僅差で折り返したが、後半10分過ぎからに相手に連続トライを許し、22-57で敗れた。
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リーグワン屈指のFWが互いにフィジカルを削り合った大一番。力のぶつかりあいは互角も、終わってみれば大差となった。
スコアで先行したのは神戸S。昨年の世界最優秀選手であるニュージーランド代表FLアーディ・サベアが新加入。12分、そのサベアのトライで先制する。トヨタは序盤、ブレイクダウンでやや劣勢に立ち、スクラムでも後れをとった。
「相手が組んだ後、体重をかけてきたのに対応するのに時間がかかった」(PR木津悠輔)
それでもボールが密集から出て動き始めればトヨタのペース。強いランナーが幅いっぱいにボールを動かして相手陣内へ。26分にWTBヴィリアメ・ツイドラキ、30分にはLOジョシュ・ディクソンがトライ、12-15で折り返した。
後半2分、あっさりとトライを許すが、1か月ぶりに復帰したボーデン・バレットのPGで7点差に。次第にトヨタが流れを押し戻し始める。相手陣内でフェイズを重ね、密集でターンオーバー、仕留めに入ろうとした矢先だった。
12分、SOボーデン・バレットからシオサイア・フィフィタへ渡ったパスを神戸SのWTB山下楽平がインターセプト。一気に75㍍近くを走り切った。
「狙っていたわけではない。相手のアタックがワンラインで裏表がないので、前に出やすい状況。内側の選手がしっかりプレッシャーをかけてくれていたので」(神戸S・山下楽平)。
これで15-29。それまで魂込めた戦いを続けてきた緊張の糸がほどけたのかもしれない。直後の15分、HL付近でボーデンのオフロードパスを再び山下がインターセプト。最後はFLサベアが、この日3本目のトライ。15-36と差を広げられた。
「バレットはスーパーラグビーの映像でも、キャリーして前に出たところで片手でオフロードしているのをよく見ていたので」(山下)。
先の場面でトヨタがスコアしていたら、流れは全く変わっていたかもしれない。途切れた糸は容易には戻らなかった。最終的には8トライを奪われ、22-57での敗戦。
姫野和樹キャプテンは会見で、ふつふつと怒りをたたえていた。
「非常に残念です。終わった後、チームに言ったのは、“これを許しちゃいけない”ということ。何かを変えなきゃいけない。自分たち自身が次のゲームに進むためにはよくある話ですけど、僕は許せなくて」
2度のインターセプトからのトライを許した後の27分、トライを決めたのは、その姫野。鬼神の形相だった。反撃の狼煙になるかと思われたが、その後も、赤いジャージーの背中を見送るしかなかった。
闘将は総括も明快だった。「自分たちとしては、もっと相手陣に入ってプレーしたい。22㍍内に入ればスコアもとれる。ミドル(中盤)で攻めすぎて、精度が落ちてカウンターパンチをくらうことが多かった。そこのゲームバランスをもっと考えないといけない」
中盤で過ごす時間が長く、徐々に体力を削られ、Xファクターのサベアに自由に走られた。キックを多用し、もっと楽に相手のエリアに入る手もあった。
これで通算成績は4勝4敗。順位は7位と、苦しい状況に追いこまれた。
「強くなるということは、こういった試合を学びにつなげて、悔しさを忘れずに成長しなきゃいけない。それが全て」と姫野キャプテン。
バレットは言う。
「結果は残念だが、明日から気持ちを切り替えて次の試合に臨まないと。
いま一番大事なのは自信を失わないこと」
会見終了後、選手たちがロッカールームから出てくるまで1時間以上を擁した。出発予定時刻をとうに過ぎ、過去に例のない長さだった。
90年代に神戸製鋼、日本代表で活躍した名CTB元木由記雄さん(現京産大ヘッドコーチ)がかつて言っていた。
「鼻をポキンとへし折られてからが本番。そこから這い上がってくるやつが本物」。
次は中5日のショートウイークで昨季の王者・クボタスピアーズ東京ベイと花園でぶつかる。一人ひとりの覚悟を問われる週は、すでに始まっている。
(写真説明)
1)前半26分にトライを挙げたWTBヴィリアメ・ツイドラキ
2)SOボーデン・バレットは1月27日の第6節以来の登場
3)強いボールキャリーを見せたFL姫野和樹キャプテン
4)昨年の世界最優秀選手、FLアーディ・サベア(背番号7)に手こずった
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