【コラム】6節マッチレポート 芝の上の決闘

第6節マッチレポート

芝の上の決闘


試合終了から20分。
記者会見場に姿を現した東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)NO8リーチマイケル主将の呼吸は荒かった。

「きつかった」

 そう言うと、会見が始まるまでの僅かの間も、近くにあった椅子に座り込んだ。
4度のワールドカップを知る選手を疲労困憊させるほどの激闘だった。


 1月27日、豊田スタジアムで行われたトヨタヴェルブリッツ対東芝ブレイブルーパス東京の一戦。
昨年11月のラリージャパン2023開催後、新しく張り替えられた芝での初試合でもあり、スタンドには18619人の観客が詰めかけた。

 伝統的にフィジカルで鳴らす両チーム、キックオフから一つひとつの接点が早く重く、まさに芝の上の決闘。見ごたえある試合の勝敗を分けたのは、終盤の「我慢」だった。

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 トヨタVの出だしはプラン通りだった。中盤を細かなパスで繋ぎ、大外を活かすBL東京に対し、速く強くヒット。攻撃を寸断する。8分、SH福田健太がペナルティから速攻。WTB髙橋汰地が福田のキックに反応してトライ。7-0と先制する。

「常にスペースを探すのがSHの役割。タイチが上手くコールしてくれたので、それを信じていい判断ができた」(福田)


 その後も激しいコンタクトで、双方に倒れる選手が相次いだ。SOボーデン・バレットも16分、密集の中で足を痛めて退場。FBティアーン・ファルコンが10番へ、丸山凜太朗がFBへ。前節・花園L戦と同じコンビに。

 その後、BL東京にトライ、PGを許し、前半を7-10で折り返す。


 ハーフタイム、BL東京のトッド・ブラッカダーHCの指示は「キックゲームで相手にプレッシャーをかけること」。

 ニュージーランド代表SOリッチー・モウンガのキックで、トヨタVはエリア獲得で苦しい状況に。ブレイクダウンでも、徐々にトヨタV側に反則の笛が吹かれるようになる。


10分にPGを許し、ビハインドは6点に。
直後の11分、WTBヴィリアメ・ツイドラキが相手のボールを故意に落としたとして、10分間の一時退場に。それでも一人少ない時間帯の17分に、相手ゴール前スクラムからWTB髙橋汰地がこの日2本目のトライ。12-16と追いすがる。相手22㍍内に入れば崩しきれるが、反則により自陣を脱出できない。28分にはLOアイザイア・マプスアが反則の繰り返しでイエローカードに。直後、自陣ゴール前のペナルティからトライを許し、12-23とリードを広げられた。開始からの激しいコンタクトで体力が削られる中、人数が不利な状況での打開策は限られた。


 最終スコアは12-28。BL東京が1トライを追加して、全勝を守った。


最後まで足を止めなかった敵将リーチは、「いいプレーをしてはミスの繰り返し。その中で、80分間規律を守れたのが良かった」と勝因を挙げた。後半の反則はトヨタが11、BL東京が4。姫野和樹キャプテンは「簡単なペナルティを犯して、流れを戻すことが出来ずやられてしまった」。両キャプテンのコメントは表と裏で重なり合う。


 HO彦坂圭克は「前に出られた。スクラムも悪くなかった。感覚は負けてない」。最前列で身体を当てた選手の体感は説得力がある。姫野キャプテンも「いいエナジーを見せて、やろうとすることは出来た」。


 前に出る烈しさ、瞬時の切り返しでトライを取り切る能力の高さは見せられた。ゆえに課題も明確だ。

「(反則は)レフリーのコールを聞かなかったり、自分たちで責任を持って向き合っていかないといけない部分。もっとスマートになっていかなくては」。姫野キャプテンは自分たちに矢印を向けた。


これで6節を終了し、3勝3敗。順位は8位となった。


 2月は昨季の4強が参加する「クロスボーダーマッチ」の開催で、リーグワンの日程は不規則になり、トヨタVは17日にパロマ瑞穂ラグビー場で三重ホンダヒートと対戦。
3月から通常開催に戻る。身体を休めてリフレッシュし、これまでの課題と向き合う時間は十分にある。


 残り10試合、2度目の開幕の気持ちで挑みたい。

① 先発したSH福田健太。チャンスへの嗅覚を発揮した

② 「入りはよかったし、前にも出られた。課題はタックラーの判断」とHO彦坂圭克

③ コンディション復帰し、前節の花園L戦からメンバー入りしているFB丸山凜太朗

④ 昨季まで在籍していたBL東京CTBロブ・トンプソンをSOボーデン・バレットが止める

⑤ 豊田章男会長も観戦、再合流したスティーブ・ハンセン総監督と握手

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