須藤元樹[PR]
「経験をチームに還元したい」
ヴェルブリッツの第1列に、頼もしい二人が加わった。
東京サントリーサンゴリアスから移籍したPR須藤元樹と、コカ・コーラレッドスパークス、コベルコ神戸スティーラーズに在籍していたHO有田隆平だ。ともに日本代表キャップ保持者で、前所属チームでリーグワン前身のトップリーグ優勝経験を持つ。須藤は明大からサントリーに加入した年(2016年度)に全試合メンバー入りし、トップリーグ優勝、翌年に連覇を果たした。有田は移籍1年目の2018年度に戴冠。頂点の景色はもちろん、山裾から上っていく過程を知っていることが、何よりの強みだ。その二人が今季、緑のジャージーでスクラムを組む。
右PR としてトヨタ伝統のスクラムに参戦するのは須藤元樹だ。
ユース時代からスクラムの強さで名を馳せた。日本代表、サンウルブズ、U20、ジュニア・ジャパンと各世代の肩書は揃っている。サントリーに7シーズン在籍、30歳を迎えるにあたって、新たな挑戦を決めた。
「他のチームでやったらどうなるんだろうという気持ちが少しずつ出てきて。エージェントにどこかチームはないかと聞いて、真っ先に手を挙げてくれたのがトヨタでした」
トヨタにとって、サントリーはこれまで苦汁をなめてきた相手。だが昨季のリーグワンで12シーズンぶりに勝利を挙げ、チームが甦るきっかけともなった。奇しくもその一戦が、須藤の心を動かした。
「移籍は確定してなかったんですが、“こういうラグビーもあるんだ”と肌で感じた。これまでトヨタと対戦するときはFWで後手に回ると厄介なので、早い展開で勝負していたんですが、そこで崩された。自分のラグビースタイルって何だろうと考えたとき、パワープレー、スクラムかなと。だったら、トヨタでそれを還元できるんじゃないかと」
自分の強みとトヨタの持ち味が重なったことが決め手だった。
小1から中3まで、平日は空手道場に通っていた。小6から週末は練馬ラグビースクールで楕円球を追うように。
「低い姿勢で突きを出したりするので、空手でだいぶ足腰を鍛えられました」
身長173㌢。だが肩幅も身体の厚みもたっぷり。その体形で組み合うスクラムはどっしりと動かない。
「トイメンで自分より小さい選手はまず、いない。必ず下をとれるのが自分の強み。そこで自分の形を作れば下から持ち上げられる」
移籍先にトヨタを選んだのは、フロントローならではの理由もある。
「トヨタは後ろ5人が大きい。後ろの押しがあれば、より自分の強みが活かせるかなと」
平らな道ばかり歩んできたわけではない。大学4年時にはヘルニアでスタンドから試合を見守った。社会人3年目には膝の前十字じん帯を痛め、リハビリの日々。調子が上がってきた昨年3月には試合中にアキレス腱を断裂。そこからリーグワンで試合に出るまで這い上がってきた。
「ケガはしないに越したことはないんですが、戻り方のモチベーションは何回も経験しています」
レジリエンス(挫けない心)の持ち主だ。
今は夫人と愛犬のフレンチブルドックと、豊田市に暮らす。窓を開ければ豊田スタジアムが望める。趣味はバイク。車庫には二台の大型バイクが鎮座。自然豊かな環境が気に入っている。
「犬も散歩させやすいし、ちょっと行けば、ツーリングにぴったりの場所もある。僕はずっと東京で育って今回初めて外に出たんですが(笑)、自然豊かな場所のほうが性格的に合ってる」
トレードマークともいえる髭は、プロ選手になった2020年4月から伸ばし始めた。髭専用のトリマーで三面鏡を見ながら形を整える。
「その時々で自分の流行りすたりがあって、今はこのくらいがベストかなと」
実は須藤の加入には、スティーブ・ハンセンDORの「推し」があった。
「W杯で優勝した方に必要とされるのは光栄なこと。これから先、楽しみしかない」
世界的知将のお眼鏡にかなったフロントロー。こちらもフィールドに姿を現す日が待ち遠しい。
すどう・げんき/1994年1月28日生まれ/173㌢110㌔/國學院久我山→明大→東京サントリーサンゴリアス/日本代表キャップ2
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