【マッチレポート】埼玉WK戦

氷雨の死闘。
昨年度王者に肉薄

リーグワン第13節は3月25日、豊田スタジアムで開催され、トヨタヴェルブリッツは埼玉パナソニックと対戦。10-19で敗れ、通算成績を5勝8敗とした。リーグ戦は残り3試合。1週の休みを挟んで、4月7日から再開される。
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気温14度。咲き始めた桜を濡らす氷雨の中の激闘だった。
首位をひた走る埼玉WKとの一戦。開始から初代王者が牙をむいた。
1分。自陣ゴールを背にトヨタ選手が確保したボールに襲い掛かる。たまらずノットリリースの反則でSO松田力也がPGで先制する。5分にもトヨタが相手の攻撃を止めた際にオフサイド、再びPGを選択。3点を追加する。埼玉WKは攻め続けてはトヨタの反則を誘い、キックで着実に前進。雨中とあって手堅いプレー選択となった。
12分には、トヨタのゴール前ラインアウトからLOルード・デヤハーがインゴールにねじ込みトライ。0-12とリードを広げられる。
トヨタも相手陣に攻め込むが、接点で相手のリアクションが上回り、ボールを奪い取られる。そこから防御が整わないうちに反撃するのが王者の得意技。トヨタは得点こそ奪えなかったが、攻守の切り替えは早かった。全員がしっかりと踏み込んだタックルで攻撃を継続させない。
20分過ぎにはSH福田健太が相手SHに襲い掛かる。エンジン全開、全員がアグレッシブに前に出る「これぞトヨタ」のディフェンスだった。
数少ないチャンスをものにしたのは前半43分、相手LOが危険なプレーでシンビンに。直後の相手ゴール前ラインアウトからBKも加わってモールを押し、HO彦坂圭克が今季8本目となるトライを決め、7-13と差を詰めて折り返した。
 後半、激しい防御からリズムをつかんだのはトヨタ。何度も相手陣に攻め込み手を尽くすが、得点には繋がらず。スコアレスの時間が続く。11分過ぎ、相手がヘッドコンタクトによりシンビンとなり、人数的に優位の時間帯もあったが、先に得点したのは埼玉WK。20分、SO松田がPGを決めてリードを9点に広げる。トヨタも5分後にFBティアーン・ファルコンが左端の難しい位置からPGを成功させ、再び6点差に。前節のBL東京戦では最後のコンバージョンを外したが、埼玉WKを控えた週、最後までひとり残ってキックの練習をしていた成果が出た。
埼玉WKは後半35分にもPGを決め9点差、10-19が最終スコアとなった。前後半で二人がシンビンとなったものの、その時間帯も崩れることなく、王者たる実力を見せつけた。
「14人になってから、みんなが10%早く起き上がった。ああいう状態から勝ちきれたのを誇りに思う」とHO坂手淳史主将。
 敗れはしたが、FL姫野和樹共同キャプテンも、同様のコメントだった。
「前半、相手に主導権を渡してしまった。ただ、チームのメンタリティは変わってきている。選手の努力は最高だった。皆を誇りに思う」
 トライはともに1本。埼玉WKが1トライに終わったのは今季初。
 相手の南ア代表LOルード・デヤハー、CTBダミアン・デアリエンデの存在が火をつけたか、FLピーターステフ・デュトイ、SOウィリー・ルルーも、出色の出来。ルルーのキックは何度もピンチを救った。
 組織として戦えていたから、ミスが傷口を広げることなく、最後まで互角に戦えた。相手が最初の10分に集中してきたのは、それを読んでいたからだろう。
敵将ロビー・ディーンズヘッドコーチは、トヨタのスティーブ・ハンセンDORとは旧知の仲。
「1997年、一緒にコーチをしてカンタベリーでNPC(州対抗選手権)優勝を果たしました。それは私にとって初めてのコーチ経験。1年のはずだったのに、こんなに長くなって」と会見で笑った。知将は、トヨタの変化をはっきりと感じ取っていた。
「スティーブのメソッドが、明確にチーム内で共有されていました。彼は様々な場面で、必ずストレスをかけてくる。その結果、私たちにとってチャレンジングな試合となったのです」
 これで2月18日の第8節・GR東葛戦から始まった6連戦が終了した。第9節で横浜Eに大敗し、どん底まで落ちた。そこでトヨタらしさを見つめ直し、次の試合で東京SGを撃破。多少の浮き沈みを繰り返しつつも、迷いのトンネルからは抜け出せた。
「ここ数試合、チームとしてコネクトしてラグビー出来ているのが自分たちの強み。機能し始めているから、タイトなゲームが増えてる。選手一人ひとりのメンタリティも変わってきたし、チームとしていい方向性で進めている。ただその中で、もう少しディテール、小さなことの積み重ねをもっと意識しないと」
リーダーのコメントも力強かった。
残すは3試合。現在の成績は5勝8敗で8位と厳しい状況は続く。
「僕らとしては、どれだけ上まで行けるかチャレンジ。1週間リフレッシュしていい準備をしたい」と姫野共同キャプテン。
 雨中に開花したアグレッシブな姿勢と勝ちきれなかった悔しさを忘れず、残り試合を戦い抜く。



①「トヨタというチームは、僕が前面にパッションを出さないと奮い立たない」。吹っ切れた姫野共同キャプテン


②左足のキックが冴えたSOウィリー・ルルー



③疲れを知らず動き続けたFLピーターステフ・デュトイ


④フル出場で身体を張ったLO秋山大地



⑤HO彦坂圭克は今季8本目のトライ


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