SO 金典弘
ラグビーで生きていく。
金典弘はヴェルブリッツを退団した後も、これまで同様にトレーニングを続けている。照準は今年のリーグワン開幕戦。「今は新しいチームを探しているところです」。試合に出られるところが優先だ。
在籍4シーズン。183㌢90㌔のサイズで、左足のロングキックが売りのSO。だが昨シーズン、練習試合で10番を務めたのは2試合。
CTBで出たのも2試合。プレータイムは十分ではなかった。
「ずっと試合に出られてなかったので、(退団は)自分自身わかって臨んだシーズンでした。やるべきことはやったのかなと」
退団が決まると、すぐに自身でジムと契約。現役選手としてブランクを作らないよう動いた。
「すぐに切り替えられました。チャンスをもらえなかったのは、自分自身の責任と思っているので」
ベクトルを自分に向ける。
小学校まではサッカー少年。LOだった5歳上の兄を追って、東大阪朝鮮中で楕円球を手にした。
「初めて見たときから、めっちゃ面白かった。手を使えるところや、15人で助け合うところが楽しかった」
ポジションはずっと10番。ラグビーを始める直前、Jスポーツで観たSOトニー・ブラウンのプレーに衝撃を受けた。いまの日本代表アタックコーチは、三洋電機ワイルドナイツ(現埼玉)で、赤いジャージーを着てトロフィーを手にしていた。
そのまま大阪朝鮮高、東海大と進み、トヨタヴェルブリッツへ。社会人での4年間の経験がいまの自分を作ったと振り返る。
「トヨタにいる選手は、全員レベルが高い。自分自身が入った頃は、ついていかれないと思ったんですけど、すごい選手ほど、やっていることはシンプル。どんなときでも基本を大切にしている。たとえばルルー(FB)。状況や相手関係なく、自分のスタイルを崩さない。学ぶところは多かった」
自らの強みは「パスと仕掛け」。仕掛けるとは自分が前に出ることと思っていたが、ルルーに「相手の動きを見ろ」と言われた。
「相手が上がってきたら、自分の足を止めて後ろに回って他の選手を動かせと」
姫野和樹共同主将から言われた一言も意識を変えた。
「ヒメさんは“試合も練習も同じだ”と。自分自身、波があったんですけど、練習で成長できました」
多くを学んだからこそ、試合に出て成果を試したい。
「ラグビーで生きていく気持ちは固まっています」
迷いはない。
きむ・じょのん/1995年5月20日生まれ・27歳/183㌢93㌔/大阪朝鮮高→東海大/在籍4シーズン
文/森本優子
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